アビガンは…承認されない方向です。単盲検 vs 二重盲検法 ― 2020年12月20日 23:24
アビガンは催奇性があることで、新型コロナウイルスの治療薬としての承認がズーッと遅れていました。しかし、結局は、「患者が使用を受け入れる」という観察研究という枠組み以上には、治療薬としては使えない方向のようです。
※重症でない患者156名にアビガンを投与して、PCR検査で陰性になるまでの日数が、投与された群では2.8日早かった、という結果。
本来は「医師と患者が共に、本物の薬か偽薬(プラセボ)かを知ることなく治療に用いる(ダブル・ブラインド)」という二重盲検法(double blind analysis)という研究手続きをとる必要があったのです。しかし、アビガンの観察研究では、「医師は知っているが、患者は投与されるのが本物の薬か偽薬かは知らない」という単盲検査(single blind test)だったようです。つまり、使用する医師は「これは実は偽薬なのでね、効かないのだけれども。観察研究の被験者として、この人には偽薬を投与することになってゴメンね」という状況が、患者側に悟られたり疑われたりする可能性が否定できないので、「薬の投与による暗示効果が偽薬と本物の薬とで同じだったとは言えない」ためでした。
ようするに、「(…これは本物のアビガンだから聞くはずだ)」という自信に満ちた医師から投与されたときと、「(…偽薬だから効かないだろうなあ…)」と自信のない医師からの投与では「薬の効果が違うから」、研究の土台が整っていなかった、ということです。実は、新しい薬を作る創薬の専門家によると、「暗示効果を超えるほどの薬効のある新しい薬を作り出すのは極めて困難…」ということなのです。
前にも書きましたが、催眠と暗示の専門的な書籍『精神生物学(サイコバイオロジー): 心身のコミュニケーションと治癒の新理論』(1999)が、人の免疫にも、本人の無意識の思い(暗示…という言葉で表すことにします)が大きく影響することを明らかにしています。
※ 5/23のブログ:この本の紹介があります
薬効については、例えば、「鎮痛剤の効果の55%は暗示効果」であることが紹介されています。これは、ただの偽薬でも、「良く効く痛み止めだ」と思って服用すれば、痛みの半分は軽減できるということです。
*もしくは、被験者の半分には効いたということだったか…。すぐに確認できずスミマセン。
そうした研究結果が出ているため、「投与する医師側も、服用する患者側も、その錠剤が偽薬であるかどうかは知らない状態」で「本物の薬、あるいは偽薬」のどちらかを投与する―という「二重盲検法」の方法をとらないといけないわけです。もちろん、医師側に薬を渡す管理者のレベルではそれが本物か偽薬かのリストはあるのです。それで、偽薬を服用した人と、本物の薬を服用した人とで、どれくらいの効果があったかを対比するわけです。そうして、統計的に有意に(1%あるい5%の間違いの可能性を許容して)、「本物の薬の方に一定の効果があった」と結論付けるわけですね。*現在は有意性検定だけではなく、検定力分析を用いて効果量を把握するのが必須ですけれども。
北海道新聞の数日前の記事(12/16付け)に、「偽薬効果(プラセボ効果)」とは逆側の効果である「副作用についての偽薬効果」すなわち「ノセボ効果(nocebo effect)」が紹介されていて驚きました。
「…脂質異常症の治療薬スタチンには筋肉の痛みや倦怠感と行った強い副作用があり、そのため中断する人が多いこと。しかし、研究の結果、その副作用の90%は偽薬を投与しても発生した」(イギリス; 2016~2018年、被検者37~79歳の60名)のです。つまり、何にも効かない偽薬をスタチンという薬だとして服用すると、本物の薬を服用したときの副作用の90%(記事には数値の正確な説明はなし)が起きた…というのです。「ノセボ効果」について実に分かりやすい、凄い研究結果でした。
「気のせい…の力」についてきちんと勉強する際、上記1999年の本が大変に参考になりました。暗示の効果などを長年、研究してきたので紹介しましたが、このブログと出版社とは残念ながら何の関係もありまっせん。
※重症でない患者156名にアビガンを投与して、PCR検査で陰性になるまでの日数が、投与された群では2.8日早かった、という結果。
本来は「医師と患者が共に、本物の薬か偽薬(プラセボ)かを知ることなく治療に用いる(ダブル・ブラインド)」という二重盲検法(double blind analysis)という研究手続きをとる必要があったのです。しかし、アビガンの観察研究では、「医師は知っているが、患者は投与されるのが本物の薬か偽薬かは知らない」という単盲検査(single blind test)だったようです。つまり、使用する医師は「これは実は偽薬なのでね、効かないのだけれども。観察研究の被験者として、この人には偽薬を投与することになってゴメンね」という状況が、患者側に悟られたり疑われたりする可能性が否定できないので、「薬の投与による暗示効果が偽薬と本物の薬とで同じだったとは言えない」ためでした。
ようするに、「(…これは本物のアビガンだから聞くはずだ)」という自信に満ちた医師から投与されたときと、「(…偽薬だから効かないだろうなあ…)」と自信のない医師からの投与では「薬の効果が違うから」、研究の土台が整っていなかった、ということです。実は、新しい薬を作る創薬の専門家によると、「暗示効果を超えるほどの薬効のある新しい薬を作り出すのは極めて困難…」ということなのです。
前にも書きましたが、催眠と暗示の専門的な書籍『精神生物学(サイコバイオロジー): 心身のコミュニケーションと治癒の新理論』(1999)が、人の免疫にも、本人の無意識の思い(暗示…という言葉で表すことにします)が大きく影響することを明らかにしています。
※ 5/23のブログ:この本の紹介があります
薬効については、例えば、「鎮痛剤の効果の55%は暗示効果」であることが紹介されています。これは、ただの偽薬でも、「良く効く痛み止めだ」と思って服用すれば、痛みの半分は軽減できるということです。
*もしくは、被験者の半分には効いたということだったか…。すぐに確認できずスミマセン。
そうした研究結果が出ているため、「投与する医師側も、服用する患者側も、その錠剤が偽薬であるかどうかは知らない状態」で「本物の薬、あるいは偽薬」のどちらかを投与する―という「二重盲検法」の方法をとらないといけないわけです。もちろん、医師側に薬を渡す管理者のレベルではそれが本物か偽薬かのリストはあるのです。それで、偽薬を服用した人と、本物の薬を服用した人とで、どれくらいの効果があったかを対比するわけです。そうして、統計的に有意に(1%あるい5%の間違いの可能性を許容して)、「本物の薬の方に一定の効果があった」と結論付けるわけですね。*現在は有意性検定だけではなく、検定力分析を用いて効果量を把握するのが必須ですけれども。
北海道新聞の数日前の記事(12/16付け)に、「偽薬効果(プラセボ効果)」とは逆側の効果である「副作用についての偽薬効果」すなわち「ノセボ効果(nocebo effect)」が紹介されていて驚きました。
「…脂質異常症の治療薬スタチンには筋肉の痛みや倦怠感と行った強い副作用があり、そのため中断する人が多いこと。しかし、研究の結果、その副作用の90%は偽薬を投与しても発生した」(イギリス; 2016~2018年、被検者37~79歳の60名)のです。つまり、何にも効かない偽薬をスタチンという薬だとして服用すると、本物の薬を服用したときの副作用の90%(記事には数値の正確な説明はなし)が起きた…というのです。「ノセボ効果」について実に分かりやすい、凄い研究結果でした。
「気のせい…の力」についてきちんと勉強する際、上記1999年の本が大変に参考になりました。暗示の効果などを長年、研究してきたので紹介しましたが、このブログと出版社とは残念ながら何の関係もありまっせん。
9/24木 北海道 感染+11,治療中204。昨日のブログには計算上のエラーが… ― 2020年09月25日 17:27
9/18金 感染1905人,退院1723人,治療中182名! 9/19土 感染1922人,退院1731人,治療中191名! 9/20日 感染1938人,退院1734人,治療中204名!! (図) 9/21月 感染1953人,退院1738人,治療中215名!!! (拡大図) 9/22火 感染1962人,退院1746人,治療中216名 9/23水 感染1974人,退院1762人,治療中212名 9/24木 感染1985人,退院1781人,治療中204名 * 北海道感染状況―翌日の新聞による。 これまでの死亡者107人 (北海道新聞朝刊から) *赤色は連休。 |
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昨日、PCR検査の偽陰性に関わる数値を書きました。PCR検査について「検査の感受性は 0.70」「検査の特異性 0.99」(仮に)として、前にも紹介しましたが、「尤度比」が計算できます→「オッズ計算器」。
さて、昨日のブログに書いた数値は、実は暗黙のうちに「1000人が全員陽性だったとして…」という仮定がおかれていますが、気がつきましたか!?
それで「ビックリ!」するような数字となっています。実際は、ここに人口全体の「有病率」、あるいは日本の空港に到着する海外からの来訪者の「有病率」をいれる必要があります。
来訪者1000人中10人が罹患して空港に着いたということにすると、有病率は「1% 」(0.01)となります。すると、偽陰性の人は「三名」です!
*実際の有病率は国毎に違いますが、おおむね、10000人に数名程度のようです。一般にこうした計算の際に、「有病率」に類した基本情報が見落とされる傾向があることが知られています(Tversky and Kahneman)。説明が足りずゴメンナサイ。
○ PCR検査の「偽陰性」、つまり「判定が陰性なのに実際は罹患している人」は約30%存在する―。これはPCR検査で罹患者を陽性と判断できる確率が70%程度と低いためです。「自国で陰性、日本に着いて陰性」と二回とも陰性となる罹患者は、0.3x0.3=0.09つまり9%は陽性者で、それが国内に入ってきます。1000人の9%とは90人なので、
↑これにはエラーがあるので、要注意!
以下はオッズ計算結果です(こちらの数字は大丈夫)。
