以前、札幌ススキノ5店、小樽4店の「昼カラオケ店」で発生した感染クラスターで、感染者は38名(平均年齢75歳)、感染しなかった人は52名(平均年齢68歳)というデータが出てきました。
札幌にしても小樽にしても、いずれも小さな「スナック」が昼間の集客に営業していたものです。「カラオケ歌い放題、飲み物・簡単な食事付き1500円程度…」といったような状況だそうです。人数的には10数名も入れば満員となるような小さなお店がほとんど。
全体的に低い感染率を考えると、そのときの感染者・保菌者は高々1名しかいないと考えられます。その人が息を吸い、息を吐き出し、飲食をして口の中では唾液が分泌され、マイクをもち、周りに人の話しかけ、そして、歌ったりする中で、保菌者以外の人がその人のウィルスを吸い込んで感染する…という状況と思われます。
なお、接触感染ではなく飛沫感染がほとんどで、極小の飛沫であるエアロゾルによる「空気感染」と見る方が正しいと思っています。WHOは公式には認めていませんけれど…。
「昼カラオケ」で… |
感染した人 (38人) |
感染しなかった人 (52人) |
カラオケで歌った |
97% (a) |
73% |
店内でマスクせず |
79% |
47% (b) |
マスクしないで歌った |
96% (c) |
93% (d) |
店内で飲食した |
97% (e) |
88% (f) |
滞在時間は |
3.1時間 (g) |
2.1時間 (h) |
ぱっと見て気がついた個人的な解釈を書きます―。(本当は"BreakDown"データが必要なのですが…)
- 歌うと感染率が高い―
これは声を出した後に、たくさん息を吸い込むのでウィルスを一緒に取り込む量が多いため。
- マスク着用していないけれど感染していない人が半分近くいる―
マスクが無くても浅い呼吸でいれば、吸い込むウィルス量は意外に少ない。
- マスク無しで歌う― 吸気とともにウィルスを大量に吸い込んでしまう。
- マスク無しで歌って― 室内のウィルスがそれほど濃くないときは感染せず。
- 飲食してたくさん唾液が出る―
唾液を介して口内の粘膜などACE2受容体にウィルスがくっ付く。
- 飲食で唾液が出ても―
空気中のウィルス量が少ないので、口からの感染がおきにくい。
- 三時間もいた―
感染者のウィルスが店内に大量に漂いそれを吸ってしまった。
- 二時間くらい―
感染するような量にまで、店内にはまだウィルスが十分にたまっていない。
という状況を想定してみると、次の可能性が高いと思われます―
「室内のウィルス量が感染の決定要因である!」
なお、カラオケなどでの「歌うときの飛沫量」の別の研究では、飛沫量は通常の会話の11倍と高く、さらに、飲食後に歌ったときの飛沫量は14倍と高い!ということです。
1-2メートル先に落ちてしまう大きな飛沫とは別に、しばらく空中に漂うのが微細なエアロゾル飛沫です。これはあまりにも軽いので落下しずらく、これが普通の会話の11倍~14倍も空中に漂っていれば、吸い込んだときのウィルス量がすごいことになるわけです。
したがって対策は簡単ですね。
*もちろん手指のアルコール消毒、三密回避は必須。
- しっかり換気をする。室内の空気を排気し、外気が入って来るようにする。
- 室内の空気を攪拌して局所的に高いウィルス濃度を全体に下げる。
- 室内に空気の流れをつくり、流れが途絶えないようにする。
ちなみに、病室の「換気」はナイチンゲールが重視していた事柄なのでした。(『看護覚え書き』)