日本人に西欧語は聞こえにくい― 母音の大脳左右半球での処理と角田理論2020年10月04日 16:52

10年ほど前、イギリスで一年ほど暮らしていました。ロンドンでは様々に訛った英語に出会って困ることもありましたが、それなりに生活をしてきました。
 その頃、オックスフォードで英会話の勉強に来ていた日本人と会いました。しかし、彼は日常会話もできず、世界各国から来ていたクラスメートに侮蔑的な扱いをされておりました。日本で何年も働いてお金を貯めて、わざわざイギリスまで勉強に来ていたので気の毒に思い、「日本人は現地でよほど英語を勉強しても、聞き取れないのですよっ」と伝えました。「単純な努力だけではなかなか聞こえないですよっ」とも言いました。すると、少しホッとしたような顔を今も思い出します。

 私の世代では、英会話や発音の授業は中高でもほとんどなく、会話に触れたのは大学に入ってから、それもたまたま生の英会話を勉強する機会に出会ってからでした。それから、30-40年間、ラジオの英会話を録音してイヤーホンで聞き続け、左の耳穴がただれ、右の耳穴がただれ…。そうやって反復して聞いても、どうにも英語の音が頭に入ってこない!という絶望にさいなまれつつそれでも何とか頑張ってきた…という、悲しひ過去のお話しでした。※英語論文などを読まないといけないので致し方なし…。



実は、1978年に出版された『日本人の脳」(角田つのだ 忠信著、大修館書店)では、日本人が音を聞いて認識するときの大脳左右半球の使い方が、何と!西欧人とは大きく異なっていること、が書かれていました。
※もちろん、自分で「使い方」を自覚するのではなく、母音とか子音とかコオロギの声とかハミングとか機械音などが、自動的にどちらの大脳半球によって処理されるかが、日本人と西欧人では異なるということです。

初めて読んだときは、本当に目からウロコが落ちる状態でした。音の情報処理のシステムが日本人と英米人では違うのだ、と。オックスフォードで出会った日本人に話したときと同じ反応で「えっ、そうだったのか!」だったのです。
 定年となり、ある程度ヒマな時間が出来たのでトライしたのが、英語の無料映画をインターネットで見続けることでした。コロナ禍でもあり、時間があるときは英語のテレビドラマや英語の映画を大量に見ることが出来ました。それも、ブルートゥースで音声をヘッドホンまで飛ばして「きちんと聞く」体制です。すると、ブロークンで曖昧な発音のギャングの4文字侮蔑語やら鼻声やらも少しずつ聞こえやすくなってきたのは、この年齢としては望外の喜び…(将棋の若手ホープ、藤井聡太二冠が使った言葉)。^_^;
年なので、英語の高い音はやはり耳には届きづらいのですが、慣れればそれなりに届いてくるのは嬉しいものです。

いずれにしても、ツノダ理論に基づけば、大脳左右半球への音声処理の回路に介入することがないと、日本語話者は「西欧語への耳が養えない」という、往年の発見を再発見しつつあります。コロナ禍にあり内向きにうろうろできる時代なので、この際に「西欧語という子音言語」に挑戦してみるというのは如何!? とりあえず、私のやり方は簡単ですー「日本語の母音をできる限り発音しないで独り言を言う」―「k'n'n'ch'wa」「m'z'k'sh'd's'」…。

※物事の認識の仕方が母語である言語によって大きく左右される、という「言語相対性仮説」(Sapir and Whorf)では、西欧語をまとめてSAE言語(Standard Average European語)と呼んでいます。また、そうした西欧語の「I am a boy 」といった主語・be動詞 (copula)という「I = boy」形式の抽象度の高い表記に含まれる「認識の構造的な問題」については、ポーランド出身のコージブスキー(A.Korzybski)が「一般意味論」("Science and Sanity", 1933)を通じて明らかにしています。

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