コロナ禍の中、衣食足りて礼節を知る― マスローの五段階動機理論!2020年04月29日 11:44

4月から「寺子屋 心理学」を始めて、心理学の基本的で面白いところを解説するはずでした…。実際は、連日のコロナ禍の状況の方が痛切でほとんど新型コロナウィルス関係のブログになっています。さらに、最近は道内・全国の資金援助などの相談窓口をまとめて載せたりしています(4/26のブログ)。

「寺子屋 心理学」なのに、どうしてこういう展開になっているかというと、そこにはきちんとした心理学的な裏付けがあることを書いておきたいと思います。
無人島に流れ着いたロビンソン・クルーソーのように「まずは生きていくこと」だからです。(1)食べ物、水、暑さ寒さをしのぐ衣服や建物など、そして、(2)怪我をしたり、猛獣や毒を持つ昆虫に襲われたり、他の人たちにひどい目に遭ったりしないこと…。そうした「生存への意識」「安全であることの希求」から全てが始まることが定式化されているのです。

○A.マスローの五段階動機理論

米国の心理学者マスローは、「人間の動機は階層的な段階があり、下位の基本的な欲求が充足されるとその一つの上の段階の欲求が現れる―というプロセスが、1段階目から5段階目まで順に繰り返されていく」と唱えた。

5. 自己実現欲求― 真の自分自身を実現しようとする欲求
4. 自尊欲求― 自尊心を他者によって満たされたい承認欲求 ↑
3. 所属と愛への欲求― 心の通い合う人間的な関係への欲求  ↑
2. 安全欲求― 身も心も損なわれず傷つけられないことへの欲求 ↑
1. 生理的欲求― 生存に関わる身体要件が充足されることへの欲求 ↑

一番下の「1.生理的欲求」がある程度満たされると、その上の「2.安全欲求」が現れる。身心ともに損なわれず自身の安全がある程度満たされると、その上の「3.所属と愛への欲求」が現れる。これは、周りの人達との心の通い合う人間的な関係・所属を求める欲求であり、これがある程度満たされると次に「4.自尊欲求」が現れる。これは、自身の価値や意味を他者によって認められ承認されることへの欲求である。
充足されるたびに下から上へと欲求のレベルが上がり、欲求の内容が異なってくる。
*なお、一番下の「生理的欲求」から4番目「自尊欲求」までを「欠乏動機」と呼ぶ。

出典: "A Theory of Human Motivation" A. H. Maslow (1943)
Originally Published in Psychological Review, 50, 370-396.

※D.マクレガー(Douglas McGregor,1960)は『企業の人間的側面』において、 旧来の「アメとムチ」で管理する経営は、「生理的欲求・安全欲求」を損なうことで 管理するものと捉えて、それをX理論的管理と呼んだ。
それに対して、新たに上位の欲求「愛と所属への欲求」「自尊欲求」「自己実現欲求」に基づいて経営を行うものをY理論的管理と呼んだ。この本により、産業界にマスローの五段階理論が広く知られることになった。

※マスローの翻訳・研究者であった上田吉一教授は「マズロー」ではなく
濁らず『マスロー」と呼んでいた。ただし、米英では一般的に「マズロー」と濁って発音する。なおロシア語・ポーランド語でMASLOWは「バター」の意味。(by kasait)



感染して病んだり傷ついたりせず、まずは何とか安全を保ちつつ生き延びていくこと、これがない所にはまともな文化も経済も成り立ちません。

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